前文
日本基督教団神奈川教区は、1965年 東京教区より分離独立し、教区としての歩みを始めた。そして「教区の教会性の強調」「信仰告白の実質化」を方針に掲げ「一つの教会」となるためのさまざまな努力を重ねられてきた。
しかし1969年以来、万博キリスト教館出展問題、東京神学大学への機動隊導入問題等を契機にして教団成立以来十分に自覚・検討されてこなかった諸問題が一気に噴出する状況となった。すなわち、教区においても諸教会やキリスト者の間に、福音理解や教会観、信仰告白に対する態度や宣教の理解、さらには「教区とは何か」等、重要な問題についての理解に大きな相違があり、それらが具体的な諸問題との関わりで表面化して、多様な立場や主張が対立し合うことになった。そのため、従来の「教区基本方針」では教区総会すら開催できないという状況に立ち至った。
そこで教区諸機関における、「1970年度基本方針」案および修正案をめぐる精力的な議論を経て、1971年に第20回教区総会が開催され、教区内に相違や対立がある現実を率直に認めると共に、それらの相違や対立を抱えつつも尚、一つの教会であることを求め、真に「一つの教会」を「形成」することを目指すことを形成途上の教会であることを確認した。このようにして採択されたのが、今日の教区形成基本方針の原形である。
その後、教区においては「教師検定にかかわる問題」「教区の教会人事への介入を巡る問題」等さまざまな問題が起こったが、いずれもこの方針に沿ってそれらと関わるように努力がなされてきた。しかし今日、教会を取り巻く状況も大きく変化し、教区内の教職・信徒の世代交代も進む中で、教区形成基本方針を採択した事情や、提起された問題や自覚を迫られた意識、またここに盛られた願いや精神を直接に知り得る者も少なくなった。そこで、数年前から教区形成基本方針の再検討を求める声が強くなり、今日の状況に即した方針が求められるようになった。
その再検討に当たり心すべきことは、この教区がさまざまな困難な状況の中で重ねてきた20数年の歩みを踏まえつつ、現在および将来に向かう新しい展開を望むことである。すなわち、新しい状況への適応を急ぐあまり過去の状況、特に今も未解決のまま継続的に問われ続けている諸問題を忘れ去ったり、切り捨てたりしないこと。同時に、過去から引き継いでいる問題が新しい状況の中でどのような展開をうながしているかを探り求めることにより、前進に寄与するものとなることを求めたい。
このような認識と願いをもって、以下のように教区形成基本方針を定める。
本文
我々は、1941年の日本基督教団の成立、1954年の「教団信仰告白」、1967年の「第二次世界大戦下における日本基督教団の責任についての告白」、1969年の日本基督教団と沖縄キリスト教団との合同等、今日改めて問い直すべき内容を含む課題を負う教団の現実を踏まえ、理解や方法論の対立を伴うその他の諸問題についても、意見を誠実につき合せ、対話を重ね、聖霊の導きを求めつつ、なお一つの地域的共同体としての教区形成を目指すことを基本方針とする。
我々は既に、この状況の中で時と地域と課題とを共有している。さまざまな理解の相違や対立は存在する。しかし我々は共に集まり、共に祈り、共に語り合い、共に行動することが許されている。我々は対立点を棚上げにしたり、性急に一つの理念・理解・方法論に統一して他を切り捨てないよう努力する。忍耐と関心をもってそれぞれの主張を聞き、謙虚に対話し、自分の立場を相対化できるよう神の助けを求めることによって、合意と一致とを目指すことができると信じる。
我々は、合同教会としての形成、教会会議、今日の宣教、教会と国家、教会と社会との関わり、差別問題、さらに教区運営・教区財政、地区活動、諸教会の宣教の支援等、教区として取り組むべき諸課題を担い、当面合意して推進し得る必要事項を着実に実施できるようにと願うものである。
(1994年 2 月26日 第91回教区総会にて制定)